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鈴木章博士インタビュー

鈴木章博士インタビュー

——これから化学の道へ進む若者たちへ——

化学の面白さと可能性

鈴木先生私が化学の出身だから言うのではありませんが、化学はたいへん面白いサイエンスの一分野だと思います。化学の特徴のひとつに、「モノを作ること」に関係が深いことがあります。たとえば、私たちが研究してきたクロスカップリング反応を使って、多くの医薬品や農薬、テレビに使う液晶、有機ELディスプレイに使う発光体など実にさまざまなものが合成されています。

サイエンスやテクノロジーを高めて、付加価値の高い新しいモノを作り、多くの国に喜んで買っていただく。これしか、日本のように資源のない国が生きていく道はありません。サイエンスやテクノロジーの進歩にゆだねるしか方法がない。そういう意味でも、化学はとても重要な、そして面白い学問だと思います。

それと同時に、化学の世界はまだまだ伸びる可能性があります。
もしかすると、もうサイエンスの進歩に化学の入る余地はない、と思う人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。たとえば、天然の世界で、植物は光合成でいろんなものをつくってくれますね。ですが私たちは、まだ化学反応で全てを真似することはできない。まだまだ化学の世界はやることがたくさんあるのです。もちろん、化学だけに限りませんが、優秀な皆さんがサイエンスの世界にたくさん入ってくれることを、私はいつも願っています。

自分の道は、必ず自分で決める

私は小さいころから数学が好きで、大学でも数学をやろうと思っていました。それが、ある2冊の本との出合いから化学の道に進むことになりました。1冊めはアメリカの有機化学者、フィーザー教授夫妻の『テキストブック・オブ・オーガニック・ケミストリー』、2冊めは私のアメリカの恩師、ブラウン先生が書かれた『ハイドロボレーション』という本です。この本がなければ、今の私はありません。人生を変えた巡り合いでした。

これから進路を考えている若い人には、何でもすぐ結論を出すのではなく、だんだんと勉強して、自分に何が向いているかを見極めてほしいと思います。巡り合いの機会はたくさんあります。そして、自分の道は必ず自分で決めること。若い人は知識が少ないので、先輩や先生、両親などのアドバイスは大切ですが、それはあくまでも「参考」です。最終的に自分が納得しなければ、その後順調に成功すればいいけれど、失敗したときに他人のせいにしてしまいます。自分の人生は、自分で切り拓くこと。これは、いつも私が若い人たちに話していることです。

2011年8月9日、鈴木章先生のレリーフ像お披露目の式で、学生や教職員に語りかける鈴木先生。

2011年8月9日、鈴木章先生のレリーフ像お披露目の式で、学生や教職員に語りかける鈴木先生。

もう一つ、私が昔から学生たちに言ってきたことがあります。
それは、研究を続けているとなかなか結果が出ず、うまくいかない時期がありますね。私自身は、楽観主義者ですけれど、学生によっては悲観的になってしまう人もいます。そういうときは、「今日はもういい」といってビアホールに誘ったり、ジンギスカンパーティを開いたりして、早く帰って寝てしまえ、と言っていました。明日になったら違う風も吹くし、またがんばればいい。こういう考え方は、サイエンスをやっている我々だけでなく、人間みんなにとって非常に大切なことです。

(2011年8月)


【鈴木 章(すずき・あきら)博士略歴】
1930年、むかわ町生まれ。北海道大学理学部化学科を卒業後、北大大学院理学研究科化学専攻を修了し、北大理学部助手を経て北大工学部助教授、1963年から米国パデュー大に留学し、ホウ素研究の第一人者であるブラウン教授に師事、1973年から1994年まで北大工学部教授、現在は北大名誉教授。ホウ素を用いて有機化合物を合成する化学反応「鈴木カップリング」を開発し、幅広い分野に画期的な進歩をもたらし、2010年ノーベル化学賞を受賞。

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