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最近の研究結果

遅延蛍光性銅(I)配位高分子の完全無溶媒加熱合成

 

 

我々は先に、簡便で環境負荷の少ない発光性銅(I)錯体の合成法として、合成溶媒や洗浄溶媒を一切用いない完全無溶媒加熱合成法を報告しました。今回、この無溶媒加熱合成法を適用することで種々の遅延蛍光性銅(I)配位高分子を系統的に合成することに成功しました。興味深いことに、加熱合成法で得られた配位高分子はいずれも溶液法で合成した試料と比べても遜色のない高い発光量子収率や発光特性を示しました。

ヨウ化物イオンを電子源としたRu(II)錯体多層化TiO2ナノ粒子触媒の光水素発生反応

 

 

Zスキーム型光水完全分解系の創成を目指し、白金コロイド担持酸化チタンナノ粒子表面にポリピリジル型Ru(II)光増感剤を多層化させ、レドックスメディエーターとして広く用いられているヨウ化物イオンを電子源に用いた光水素発生反応の活性を検討しました。その結果、光増感剤を多層化することによって活性が飛躍的に向上しました。これにより酸素発生系との連結の実現へ向けた可能性を開拓しました。

空気下でも簡便に合成できる強発光性白金(II)ビフェニル錯体

 

 

2つのカルボアニオンでキレートされたビフェニル錯体は高い発光性が期待されますが、合成に禁水試薬が必須であり、発光材料としての展開は非常に限定的です。今回、ボロン酸のトランスメタル化反応を経由することで、従来は合成に煩雑な嫌気操作が必要だった白金(II)ビフェニル錯体を空気下ですら簡便に合成することに成功しました。また、これらの錯体は最大で量子収率80%という優れた発光性を示しました。

フッ素を導入したC^N^Cシクロメタレート型白金(II)錯体の発光挙動

 

 

シクロメタレート型Pt(II)錯体は通常強い発光性を示しますが、C^N^Cの三座配位子ではその予想に反して弱い発光しか見られないことが知られています。その理由に関して配位子にフッ素を導入したPt(II)錯体に対し分光及び計算化学を用いて調べた結果、MLCT性発光を有する平面構造から非常に小さいエネルギー障壁でゆがんだ非発光性構造へと変化することが示唆されました。これらの結果は、Pt(II)錯体の設計性と弱い発光性の理由に関しての知見を与える結果です。

ヘテロレプティック銅(I)錯体の発光性に対するジイミン配位子の影響

 

 

溶液内の安定性と高い発光性を両立する銅(I)ジイミン・ジホスフィン錯体について、種々のジイミン配位子が発光性に与える影響を検討しました。その結果、芳香族ジイミン配位子を導入した場合はいずれも良好な遅延蛍光性を示したのに対し、脂肪族ジイミン配位子では励起状態で大きな構造ひずみに起因して失活することが分かり、ジイミン配位子が励起状態のダイナミクスに大きな違いを及ぼすことを見出しました。

ベイポクロミズムのON/OFFができる高プロトン伝導性白金(II)錯体

 

 

ベイポクロミズムによるプロトン伝導度の可視化を目的に、白金(II)錯体上にピリジル基を導入しました。その結果、この錯体はプロトン化状態において相対湿度に依存した発光変化を示すとともに、高相対湿度下では6.8 × 10-3 S cm-1という高い伝導度を示しました。さらに、HCl曝露と加熱によって容易に固体状態でプロトン着脱が可能であり、それに伴うプロトン伝導性の変調とベイポクロミズムのON/OFFにも成功しました。

白金(II)錯体担持メソポーラス有機シリカの迅速ベイポクロミズム

 

 

白金(II)錯体の蒸気応答性と多孔性材料の吸着特性を併せ持った迅速蒸気応答材料を開発すべく、発光性白金(II)錯体をメソポーラス有機シリカ(PMO)上に担持しました。その結果、メタノールの蒸気に応答して白金(II)錯体がPMO上でナノ結晶化することにより、曝露からわずか1分以内に色調・発光変化を示す迅速かつ高い安定性を誇るベイポクロミズムが実現できました。

Ru(II)光増感剤を多層化した光触媒ナノ粒子による高活性光水素発生反応

 

 

光触媒水還元反応の光電荷分離過程におけるエネルギー移動過程の効果を検討すべく、白金コロイド担持酸化チタンナノ粒子表面にホスホン酸基を固定化部位として有するポリピリジル型Ru(II)光増感剤を多層化させ、光水素発生反応の活性を検討しました。その結果、光増感剤の2層化によって、犠牲還元剤であるアスコルビン酸を消費しつくすまで高活性を維持したまま光駆動し続けることを見いだしました。

★ Bull. Chem. Soc. Jpn.誌のSelected Paperに選ばれました!

発光性銅(I)錯体のジホスフィン配位子による発光由来の制御

 

 

銅(I)ジイミン・ジホスフィン錯体はその多くが強い遅延蛍光を示すため盛んに研究されています。今回、ジホスフィン配位子として三重結合を有する配位子を導入したところ、遅延蛍光性が消えた代わりに3MLCT励起状態と3ππ*励起状態からのリン光が競合する二重発光性が発現しました。これはジホスフィン配位子の変化による各励起状態間のエネルギー的な上下関係の変化に由来しており、今後の分子設計に指針を与える結果です。

界面活性剤による非細孔性Cu-BTC MOFの選択的生成

 

 

 

銅(II)イオンとベンゼントリカルボン酸(BTC)からなる非細孔性MOFが、非イオン性界面活性剤(PF-127)によって選択的に生成することを見出しました。通常、銅(II)イオンとBTCを均一系溶液で混合すると細孔性のHKUST-1が生成しますが、PF-127の共存下では3 mmほどの長さをもつロッド状の非細孔性MOFが高収率で生成します。また、このMOFは電位の印加下で光ディテクターとしての特性を示すことが分かりました。

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