北海道大学大学院 理学研究院化学部門

有機反応論研究室

RESEARCH

研究内容

現在の研究

 植物や微生物が生産する生物活性天然物は、複雑な構造や選択的かつ強力な生物活性を持つため学術的に興味深く、多くの研究者を魅了してきました。また天然物は創薬のリード化合物として医薬品開発において重要な役割を果たしてきました。こうした代表的な天然物生合成の概略は2000年代頃までに解明されたものの、酵素およびそれをコードする遺伝子を積極的に駆使して、有機合成に匹敵する精度で反応を理解し、物質生産を行う研究例はほとんどありませんでした。有機反応論研究室では2000年の前半にDNAのシーケンスコストの低下によるゲノム情報の増大を見越して、酵素を使った天然物の合成を企図し、生合成特有の複雑な分子の構築における反応機構の解明と同時に、酵素遺伝子を導入した汎用ホスト(微生物)で天然物合成を行うための方法論の開発を世界的に認知されるレベルで行ってきました。
 
 従来から行われてきた有機合成による天然物の合成は、数多くの制約がありました。これに対して酵素合成は、酵素をコードする遺伝子さえ入手が容易になれば、遺伝子を導入した汎用ホストを用いるという単純な手法で、あらゆる天然物を合成できる可能性があり、新規で魅力的な方法論です。但し天然物生合成には、一次代謝と異なるユニークな変換が随所に見られるため、その反応機構の解析(多くの場合in vitro)は、生合成経路を真に理解するために重要です。特に未知あるいは常識とは異なる生合成反応の解析は、生物が選んだ汎用的生合成装置の深い理解に欠かせず、人工的改変に有用な知見を与えます。有機反応論研究室は、このような視点から研究を推進しています。


主な研究内容
(1)ペプチド系抗腫瘍性物質の生産

  a) エキノマイシン(大腸菌を用いた抗腫瘍性物質の生産)
  b) サフラマイシン、エクテナサイジン
 

(2)細菌由来ポリケタイド抗生物質

  a)  ポリエーテル系ポリエーテル環構築機構の解明
  b)  ポリシクロプロパン環を持つポリケタイドの生合成
 

(3)カビ由来のポリケタイド系生物活性物質の骨格構築機構



(4)テルペン系生物活性物質の環化機構の解析と物質生産