第22回生命分子化学セミナー
『腎細動脈におけるミオシンリン酸化シグナル調節』
講演者 | 竹谷 浩介 先生 川医科大学 生理学講座 自立機能分野 助教 |
日時 | 平成22年 8月27日(金) 10:00 - |
場所 | 北海道大学理学部7号館2階 219/220室<地図> |
要旨 | 平滑筋の収縮・弛緩はミオシンの制御軽鎖(LC20)のリン酸化によって、制御されている。LC20のリン酸化量はミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)とホスファターゼ(MLCP)の相対的な活性によって決まる。一般に、平滑筋は収縮刺激を受けると、細胞内Ca2+濃度が上昇し、Ca2+/CaM複合体を介してMLCKを活性化する。更に、いくつかの刺激はMLCPのミオシン結合サブユニットや阻害タンパク質であるCPI17をリン酸化することによってMLCPの活性を抑制する。 これら二つの経路の重要性は平滑筋や刺激の種類によって異なっている。腎微小循環系はこのような多様な収縮特性を示す良い例である。しかし、腎微小循環系におけるミオシンリン酸化制御機構については、生化学的解析が困難であったことから、ほとんど知られていない。 本研究では微小平滑筋のLC20リン酸化を定量する高感度な方法を開発し、腎輸入細動脈におけるLC20のリン酸化をangiotensin II (ANG)またはendothelin 1 (ET1)で刺激後、測定した。 【方法】単離した輸入細動脈をANG、もしくはET1で刺激し、Phos-tag SDS-PAGEと高感度western blottingにより、LC20のリン酸化を定量した。 【結果】輸入細動脈においてANGは濃度依存的にLC20のリン酸化(Ser19)を引き起こした。このリン酸化の増加はRhoキナーゼ阻害剤H1152により、抑制された。一方、ET1はSer19のリン酸化だけでなく、Thr18とSer19の二重リン酸化も引き起こした。H1152は二重リン酸化を減少させたが、Ser19のリン酸化はわずかに減少させただけだった。これらの結果はANGとET1が異なるシグナル経路を活性化することを示唆している。 【結論】輸入細動脈をANGやET1で刺激すると、異なるミオシンのリン酸化状態になり、このことは二つのアゴニストが異なるシグナル伝達経路を活性化することを示唆し、integrin-linked kinaseや未同定のキナーゼが関与している可能性を示している。ミオシンの二重リン酸化は異常収縮を伴う平滑筋疾患との関連が指摘されていることから、ET1による二重リン酸化は虚血性急性腎上全に関与しているかもしれない。 |
主催 | 生命分子化学セミナー |
連絡先 | 北海道大学大学院理学研究院化学部門 村上洋太 TEL: 011-706-3813 |