お知らせ
2014年2月24日

【第33回】SUMO 化修飾によるテロメア長制御

講演者

田中 克典 先生
(関西学院大学理工学部 教授)

日時

平成26年2月24日(木) 16:00-17:00

場所

北海道大学理学部 6号館 2階04-2室<多目的演習室>

概要

真核生物のゲノムDNA の大半はタンパク質をコードしていない非コードDNA 領域で占められている。この領域は染色体上で起こる全てのイベントを制御・維持する機能を担っている。中でも、テロメア・セントロメア・ヘテロクロマチン領域は染色体の安定維持、分配に極めて重要な役割を果たす。ユビキチン様タンパク質翻訳後修飾因子の一つであるSUMO がこれらの領域の機能制御に深く関わることが、先行研究により明らかにされている。今回、SUMO 化修飾によるテロメア制御に関しての一定の成果が得られたので報告する。
テロメアは染色体末端に位置し、テロメアリピートと呼ばれる繰り返し配列と、その配列に結合するタンパク質(シェルタリン複合体)で構成されており、染色体末端保護に関与している。分裂酵母では、SUMO 分子であるPmt3 タンパク質を欠損させるとテロメアが伸長する。我々は、分裂酵母のテロメア長制御に関与するSUMO 化標的タンパク質としてシェルタリン構成タンパク質の一つであるTpz1 を同定した。Tpz1 はK242部位でSUMO 化を受け、Tpz1 のSUMO 化を消失させるとpmt3 欠損株と同程度なテロメア伸長が見られた。興味深いことに、Tpz1 のSUMO 化の消失に伴ってテロメラーゼのテロメア局在が増加し、一方でCST 複合体であるStn1-Ten1 複合体のテロメア局在は著しく減少した。Tpz1 のSUMO 化は細胞周期進行のS 期後期からG2 期にかけて上昇することが分かった。この時期は、Stn1-Ten1 複合体がテロメア局在を示す時期とよく
一致している。更に、Tpz1 とStn1-Ten1 複合体はSUMO 化依存的な相互作用することが分かった。
以上、テロメア長制御においてTpz1 のSUMO 化はシェルタリン複合体とStn1-Ten1複合体の連携を制御する重要な機構である事を明らかにした。

主催

生命分子化学セミナー

共催

日本生化学会北海道支部、日本生物物理学会北海道支部

連絡先

北海道大学 大学院理学研究院 化学部門
生物有機化学研究室
村上 洋太
TEL: 011-706-3813