錯体化学研究室 > 2011
最近の研究結果:2011年
ソルバトクロミズムのON–OFFができる銅(II)錯体
平面四配位Cu(II)ヒドラゾン錯体が種々の溶媒下で、カラフルなソルバトクロミズムを示すことを見出しました。 興味深いことに、このソロバトクロミズムはヒドラゾン配位子におけるプロトン脱着によって、 ON-OFF制御可能であることがわかりました。 これはプロトン付加によって、電子遷移の性質が大きく変化したためと考えることができます。
ビスヒドラゾン鉄(II)錯体/クロラニル酸共結晶の次元性制御
ビスヒドラゾン鉄(II)錯体と水素結合性ドナーであるクロラニル酸を共結晶化させ、 結晶化に用いる溶媒によって、水素結合ネットワークの次元性を1次元から3次元まで制御可能であることを見出しました。 また次元性の制御により、2次元の水素結合ネットワークを有する集積体が蒸気のプロトン性に応じたベイポクロミズムを発現した ことから、ベイポクロミズムを発現させる上で結晶構造の柔軟性の制御が非常に重要であることもわかりました。
白金(II)錯体配位子を用いた配位高分子の構築とベイポクロミズム
新たな環境センシング材料として、発光性白金(II)錯体を錯体配位子として活用した配位高分子を合成しました。 白金(II)イオンが有する特異な金属間相互作用を活用することで、各種有機溶剤を認識可能なセンサーとして 活用できることを見出しました。特に配位高分子化にMg2+イオンやCa2+イオンを用いると 有毒なメタノールに対して選択的に応答することもわかりました。
レドックス活性な白金(II)錯体液晶のクロミック挙動
ディスプレイ等に広く利用されている液晶の電子機能はその構造機能や光制御機能に比べ未開拓です。 本論文では我々が設計してきたレドックス(酸化還元)活性金属錯体液晶における配位原子効果を明らかにすると共に、 液晶特有の構造揺らぎに直結した電子状態の揺動に基づくクロミック挙動を明らかにしました。
レドックス活性モリブデン(V)錯体配位子とAg(I)、Cu(I)との集積化
Redox活性なMo(V)-トリス(o-ベンゼンジチオラート)錯体を錯体配位子として活用することにより、 Cu(I)およびAg(I)金属種との錯形成反応が進行することとともに、反応させる金属種に依存して異なる物性を有する集積体が得られることを見出しました。 特にMoとCuから成る集積体では、錯体配位子のRedox状態や溶液中の濃度変化により解離/再集積化が可逆的に制御し得る系であることを解明しました。
Co(III)錯体配位子とランタノイドイオンからなる多孔性配位高分子
Co(III)錯体配位子とランタノイドイオンからなる、3次元ナノ細孔を有する多孔性配位高分子(PCP)の合成に成功しました。 このPCPはゲスト分子の吸脱着に応じて、多孔質構造が可逆的に崩壊-再生するとともに ランタノイドイオンを置換することで、その吸着特性や構造柔軟性が大きく変化することもわかりました。
フラビン修飾白金(II)錯体の光電子移動
ビタミンB2として知られるリボフラビンを化学修飾したフラビン-白金(II)錯体において、可視光照射により フラビン環を励起すると、白金錯体部からフラビン環への電子移動が効率良く起こることを見出しました。
系統的な配位子変化による白金(II)複核錯体の発光性制御
シクロメタレート配位子を有する強発光性の白金(II)複核錯体において、シクロメタレート配位子を系統的に置換することで 3重項MMLCT(Metal-Metal-to-Ligand Charge Transfer)遷移状態からの発光寿命や発光量子収率が大きく変化することを見出しました。