錯体化学研究室 > 2013
最近の研究結果:2013年
二核銅(I)DMSO錯体の多段階フォトクロミック発光
強発光性二核銅錯体に結合異性が可能なジメチルスルホキシド(DMSO)を導入した錯体を新規に合成し、紫外線を照射することで鮮やかに色が青から黄緑へと変化するフォトクロミック結晶であることを見出しました。興味深いことに黄緑色発光となった結晶はDMSO蒸気にさらすと元の青色発光へと可逆的に変化したことから、この光と蒸気による発光色変化はDMSO配位子の結合異性と吸脱着に起因していることを明らかとしました。光による発光色変化は非常に珍しく、受光履歴センサーや蒸気検知器、OLEDなどへの応用が期待できます。
カチオン性金(III)錯体による液晶相の形成
興味深いレドックス応答を示しヘキサゴナルカラムナー液晶相を形成する[Pt(Bdt)(C8,10bpy)]に対し、中心金属にAu(III)を導入することで中心メソゲンに正電荷を持つ[Au(Bdt)(C8,10bpy)]PF6を合成しました。中心に正電荷を導入した[Au(Bdt)(C8,10bpy)]PF6においてもカラムナー液晶相を形成し、その中心電荷と対アニオンによる特徴的な自己集合能を有することを明らかにしました。
レドックス活性配位子の光励起によって水素を発生させる鉄(II)錯体
最安価な遷移金属元素である鉄(Fe(II))と、安価な有機物であるo-フェニレンジアミン(opda)から成るトリスopda鉄(II)ジカチオン錯体において、光水素発生反応が進行することを見出しました。金属錯体を用いた従来の分子性光水素発生触媒に関する研究では、貴金属中心が活性発現の中心的役割を担い、配位子が補助的な役割を担うのが主流でした。しかし本系は対照的に、有機配位子であるopdaが光吸収、H+/e–プール、水素発生、に関する中心的役割を演じ、金属イオンがそれを補佐する役割を演じるという、ともに安価な原料が織り成す新しい光水素発生反応であることを明らかにしました。
不対電子とルイス酸のDative bondによる白金(II)錯体の集積化
[Pt(II)(Bdt)(Cnbpy)]モジュールは、酸化還元特性や発光性及び自己集合特性を有する興味深い分子です。 本研究では、Pt及びBdt上の不対電子とルイス酸間の選択的なDativeBondによりこの分子モジュールを集積化する新しい方法を見出しました。 本田君、卒業前のAccept、おめでとう!
混合金属二核錯体の示すベイポクロミック・メカノクロミック挙動
窒素原子と硫黄原子の異なる配位環境を持つ架橋配位子を利用し白金とパラジウム、白金と金からなる2種類の混合金属二核錯体を合成しました。 特に白金とパラジウムからなる複核錯体では、同型構造を持つ白金二核錯体と類似したメカニズムで蒸気や機械的な圧力によるクロミック挙動を示した一方で、 その色変化は白金二核錯体と異なる領域で発現し金属イオンの違いを反映していることが明らかとなりました。