錯体化学研究室 > 2014
最近の研究結果:2014年
青色遅延蛍光を示す強発光性銅(I)単核錯体
メチルピリジン配位子を有するハロゲン化銅(I)単核錯体が高効率な青色遅延蛍光を示すことを明らかにしました。いずれの錯体も結晶状態で非常に強い青色発光を示し、いくつかの錯体において100%に迫る発光量子収率を示すことを見出しました。
強発光性銅(I)単核錯体のすりつぶし合成
原料のすりつぶしによる強発光性Cu(I)単核錯体の簡便な合成法を見出しました。また、用いるN-ヘテロ芳香族配位子によって発光色が変化するとともに、いずれの錯体も非常に高い発光量子収率を示すことを明らかにしました。
白金(II)カテコラト錯体修飾ITO電極の調製
ITO(Indium-doped Tin Oxide)電極上への修飾を目指し、レドックス活性な白金(II)カテコラト錯体にアンカー基としてホスホン酸部位を導入しました。実際にこの錯体を電極上に固定化して電気化学測定を行ったところ、カテコラト配位子由来の酸化還元波が可逆に観測され、電極表面に錯体の単分子膜が形成したことが確認されました。
ゲストに応じて柔軟に構造変化する銅(I)/ランタン(III)の多孔性配位高分子
La(III)イオンとCu(I)錯体配位子からなる新規多孔性配位高分子(PCP)の合成に成功しました。このPCPはさまざまな蒸気を取り込むことが可能であり、興味深いことにナノ細孔内に取り込まれているゲスト分子のサイズや形状を認識して、その構造を変化させていることがわかりました。Cu(I)イオンの有する低配位数と、架橋部に形成されたヒドロキソ架橋La4クラスターの両者がこの構造柔軟性に重要だと考えられ、PCPのさらなる機能化に新しい知見を与えるものと期待されます。
蒸気応答にヒステリシスを示す白金(II)/銅(II)二核錯体
興味深い蒸気応答性を示すsyn-[PtM(pyt)2(bpy)2]骨格に対し、Cu(II)イオンを導入した混合金属二核錯体を合成しました。本錯体では、Cu(II)イオンをゲスト吸着サイトとして溶媒分子を取り込むことができ、興味深いことにこれらの溶媒を取り除くと色調が「赤みを帯びるもの」、「黄色に変わるもの」、「変化しないもの」が存在するというこれまでのベイポクロミック材料では見られない蒸気に対するヒステリシスを示すことが明らかとなりました。本研究成果はより高機能な蒸気認識センサーや知的気体吸蔵材料の開発につながるものと期待されます。
リン光性とガス吸着性を兼ね備えたルテニウム(II)の多孔性配位高分子
構造異性体である二種類のRu(II)錯体配位子を用いて、リン光性を有する多孔性配位高分子(PCP)の合成に成功しました。興味深いことに、ビピリジンの4位にカルボキシル基を有する錯体配位子を用いたPCPは、可逆的な水蒸気やメタノール蒸気の吸脱着が可能である一方、5位にカルボキシル基を有する場合では多孔質構造は形成するものの、結晶水を取り除くことで不可逆的に構造が崩壊することが明らかとなりました。本研究成果は、錯体配位子を活用したゲスト吸着剤の開発に設計指針を与えるものであり、多孔性材料の多機能化につながるものと期待されます。
白金(II)ヒドラゾン錯体の光誘起C–N結合生成
プロトンを可逆的に吸脱着可能なヒドラゾンを有する金属錯体に対して、可視光を照射するとニッケル錯体では何も起こらないのに対して、白金錯体では速やかに色が変化しヒドラゾン部位が光酸化された単核錯体と、ヒドラゾン部のCおよびNで新たに共有結合を介して二量化した錯体が生成することを見出しました。興味深いことに、この反応は酸素存在下で著しく反応が加速することがわかり、光励起された白金錯体から溶存酸素へのエネルギー移動が光反応を駆動させる重要なステップであることがわかりました。この光による新しいC-N共有結合形成は錯体を活用した錯体オリゴマーやポリマーなどの新しい機能性材料開発へつながる反応と期待されます。