銅触媒による新反応の開発

遷移金属触媒を用いる有機合成は、医薬品や有機機能材料などの製造に不可欠な基盤技術です。これまでは触媒として高価な貴金属類(パラジウム、ロジウム、ルテニウムなど)が利用されてきましたが、これらは埋蔵量が少なく「レアメタル」とも呼ばれています。また、その多くは毒性が高く、化学反応生成物における残留金属が、健康および環境上の大きな問題となっています。そこで資源枯渇やコストの観点から、21世紀の化学においては、これまで使用されてきたレアメタルを安価で豊富かつ低毒性な「ベースメタル」に代替することが望まれています。今私たちが特に力を注いでいるのが、地球上に豊富に存在し、毒性も低く人や環境に優しい「銅」を触媒として利用する新反応の開発です。分子の立体構造を制御しながら反応を行う「不斉合成反応」の開発にも取り組んでいます。

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銅触媒によるアルキルホウ素化合物の共役付加

銅触媒によるアルキルホウ素化合物の
二酸化炭素によるカルボキシル化

9-BBN-H によるアルケンのヒドロホウ素化で生成するアルキルホウ素化合物のイミダゾリルα,β-不飽和ケトンに対する共役付加が銅/N-ヘテロサイクリックカルベン錯体触媒によって効率良く進行します。本反応では、基質であるα,β-不飽和ケトンとアルケンのいずれにも様々な官能基 (エステル、ハロゲン、アミド、アセタール、シアノ) を存在させることが可能です。 そして生成物の2-アシルイミダゾール部位は対応するケトン、カルボン酸、アミド基に容易に変換できます。

9-BBN-H によるアルケンのヒドロホウ素化で生成するアルキルホウ素化合物の二酸化炭素によるカルボキシル化が銅/1,10-フェナントロリン触媒によって効率良く進行します。本反応では、基質であるアルケンに様々な官能基 (エステル、ハロゲン、アミド、アセタール) を存在させることが可能です。 全過程は、アルケンの二酸化炭素による還元的カルボキシル化と見なす事ができます。

銅触媒による末端アルキンーアルデヒド付加反応

 
 

 銅/TRAP錯体触媒による末端アルキンのエナンチオ選択的カルボニル付加反応を開発しました。末端アルキンのアルデヒドへの付加反応にはトランスキレート不斉ホスフィン配位子TRAPが効果的です。アルコール溶媒中において反応加速効果が観察されました。

 

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