生命原理の追求

生命原理の追求:セントラルドグマと鏡像型生体分子間相互作用の理解を目指して

分子生物学のセントラルドグマは1958年にクリックによって提唱されました。このセントラルドグマの原理によれば、遺伝情報は、DNAの複製によって保存され、DNAの情報がmRNAに転写され、mRNAの情報が翻訳によりポリペプチド(タンパク質)が合成されます。この経路は、生命原理の根幹をなすものとして扱われています。最初の生命がどのように形成され、進化してきたのかは生命科学の最も重要な目標の一つです。当研究室では、セントラルドグマの原理から外れた、細菌におけるポリペプチドの合成経路とその機能の解明を目指しています。

また、複雑な分子進化の結果、生命はL型アミノ酸から構成されるタンパク質(L型タンパク質)とD型デオキシリボースを含むDNA(D型DNA)から構築されています。このように、生物学的経路の中心の役割を担うタンパク質とDNAはホモキラリティーが確立し、キラリティーの選択性が厳密に制御されています。しかしながら、生命の起源において、なぜL体のアミノ酸を含むタンパク質やD体のデオキシリボースを含むDNAが選択されたかはまだ明らかとはなっていません。さらに、鏡像体分子間の認識能の交差性について実験的に解き明かすことは創薬の面からも非常に重要です。当研究室では鏡像体生体分子間の構造と機能を解明するためのターゲットとして、私たちは、タンパク質の多量体形成性機能ドメインを選択しています。これらの天然型L型ドメインおよび鏡像体D型ドメイン間の相互作用とその特異性、さらに機能を解析することで、一方の鏡像体単独からでは得られない新規相互作用を持つことを示しています。

今後、これら生体分子の相互作用や機能を明らかにする事で、「キラル認識」、「ホモキラリティーの原因」、さらには「化学反応の集積による生命誕生」を解き明かす足がかりになることが期待されます。

研究概要