錯体化学研究室 > 最近の研究結果

最近の研究結果

発光性銅(I)錯体のジホスフィン配位子による発光由来の制御

 

 

銅(I)ジイミン・ジホスフィン錯体はその多くが強い遅延蛍光を示すため盛んに研究されています。今回、ジホスフィン配位子として三重結合を有する配位子を導入したところ、遅延蛍光性が消えた代わりに3MLCT励起状態と3ππ*励起状態からのリン光が競合する二重発光性が発現しました。これはジホスフィン配位子の変化による各励起状態間のエネルギー的な上下関係の変化に由来しており、今後の分子設計に指針を与える結果です。

界面活性剤による非細孔性Cu-BTC MOFの選択的生成

 

 

 

銅(II)イオンとベンゼントリカルボン酸(BTC)からなる非細孔性MOFが、非イオン性界面活性剤(PF-127)によって選択的に生成することを見出しました。通常、銅(II)イオンとBTCを均一系溶液で混合すると細孔性のHKUST-1が生成しますが、PF-127の共存下では3 mmほどの長さをもつロッド状の非細孔性MOFが高収率で生成します。また、このMOFは電位の印加下で光ディテクターとしての特性を示すことが分かりました。

白金(II)錯体のキラル・ラセミ体の違いによる蒸気吸着能の制御

 

 

 

蒸気応答性に対するキラリティの影響を検討すべく、キラルな置換基を修飾した白金(II)錯体を合成しました。この錯体のキラル・ラセミ体における蒸気応答性を調べた結果、ともにトルエンに対する蒸気応答性を示す一方、吸着されたトルエン分子の脱離温度が異なっていることが分かりました。これは、キラル部位の配向による結晶構造への影響がラセミ体・キラル体それぞれで異なるため、蒸気の脱離しやすさが変化した事に由来すると考えられます。

陰イオンで色調をチューニングできるエレクトロクロミック白金三核錯体

 

 

 

電気をかけると色が変わるエレクトロクロミズムは透明ディスプレイなどの原理として盛んに研究されていますが、各状態の色調をチューニングするためには合成化学的に分子修飾をする必要がありました。今回、白金三核錯体をエレクトロクロミック色素として使うことで、分子修飾などの煩雑な操作をしなくても共存させる陰イオンを変えるだけで電気をかけた時の色を赤から青緑まで幅広くチューニングすることに成功しました。

★ Chem. Eur. J.誌の内表紙に選ばれました!

強発光性銅(I)配位高分子の完全無溶媒合成

 

 

 

次世代の発光材料として期待される銅(I)錯体を低環境負荷で合成する方法として、すりつぶし合成や加熱合成が期待されています。しかしこれらの方法では過剰の配位子が必要であり、有機溶媒による洗浄が必要でした。本研究では、すりつぶし合成や加熱合成ののちに過剰の配位子を加熱により揮発させ除去することで、有機溶媒を一切使わずに高純度・高収率・短時間で強発光性銅(I)配位高分子を得ることに成功しました。

二段階ベイポクロミズムとプロトン伝導性を示すPCP

 

 

 

ホスホン酸基修飾された発光性ルテニウム(II)錯体とランタノイドイオンから成る新規多孔性配位高分子(PCP)を合成しました。このPCPは細孔壁に並ぶホスホン酸基を通したプロトン伝導性を示すことがわかりました。また、ルテニウム(II)錯体の3MLCT発光エネルギーが水分子の吸着に伴い低湿度域では高エネルギー化、高湿度域では低エネルギー化するという二段階のシフトを示す興味深い挙動を示すことがわかりました。

キラルなアニオンによるカチオン性白金(II)錯体のベイポクロミズムの制御

 

 

キラリティによる結晶構造や蒸気応答性の制御を目的に、カチオン性白金(II)錯体のカウンターイオンとしてキラルな酒石酸水素イオンを導入しました。その結果、酒石酸水素イオンのラセミ体とL体を用いた結晶はそれぞれ異なった白金間相互作用を示す事が分かりました。この違いはベイポクロミック発光の波長の違いとして検出できる事から、カウンターイオンのキラリティによってベイポクロミック挙動を制御できる可能性が示唆されました。

ピリジル基修飾Ru(II)錯体を固定化した光増感ナノ粒子による光酸素発生反応

 

 

 

光酸素発生反応の高効率化を目指し、ピリジル基を導入した各種Ru(II)光増感剤をTiO2ナノ粒子上へと固定化しました。このうち、ピリジル基を6つ導入したRuPy6ではTiO2への固定化が触媒活性に与える影響は小さかった一方で、2つ導入したRuPy2では固定化によって顕著な触媒活性の向上が見られました。これは、Ru(II)固定化TiO2ナノ粒子の表面状態が光触媒反応に大きな影響を与えていることを示す結果です。

アニオン性Pt(II)-NHC錯体の系統的なπ拡張とその光物性

 

 

 

N-ヘテロ環状カルベン(NHC)を有するアニオン性Pt(II)錯体に対し、系統的π拡張により青色から橙色の可視領域において固体状態のリン光特性を調べました。4-300Kの広い温度範囲でのリン光寿命測定から、その失活過程とゼロ磁場分裂を検討し、そのリン光特性がこれまでのPt(II)錯体よりも一重項の寄与が大きいことが示されました。これはPt(II)錯体のリン光特性におけるカルベン配位子とアニオン性の優位性を示す結果です。

★ Inorg. Chem.誌の表紙に選ばれました!

K2[CdRu(CN)6]の正孔移動能が向上させる白金担持CdSナノロッドの光触媒能

 

 

 

硫化カドミウム(CdS)は可視光吸収能や水の酸化・還元に適切なバンド構造を有するため水の可視光分解反応に有望な半導体ですが、一方で光触媒反応中での耐久性が劣ることが問題でした。本研究では、電子伝達剤として[Ru(CN)6]4–を用い、白金担持CdSナノロッドを用いて光触媒反応を行ったところ、系中で形成するプルシアンホワイト類縁体K2[CdRu(CN)6]の正孔移動能により光触媒能が劇的に向上することを見出しました。

★ Sustainable Energy Fuels誌の表紙に選ばれました!

このページの先頭へ