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最近の研究結果

遅延蛍光とリン光を切り替えるメカノクロミックな銅(I)配位高分子

 

 

 

ヨウ化銅(I)二核錯体を組み上げたフレキシブルな多孔性配位高分子(PCP)が、機械的なすりつぶしと蒸気曝露によりその発光を遅延蛍光からリン光へと可逆的に変化させることを見出しました。従来、このように外部刺激で発光色のみならず発光由来のスピン多重度までもを可逆的に変化させることは非常に困難であり、発光色変化や強発光にとどまらない新しいスイッチング挙動として興味深い成果です。

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イリジウム(III)光増感剤のナノ粒子表面における配向制御と光増感特性

 

 

 

高効率な光水素発生を達成するためには、光電子移動の効率を向上させる必要があります。今回、アンカー基の位置が異なる2種類のIr(III)光増感剤をそれぞれ酸化チタンナノ粒子上へと固定化したところ、励起電子が局在化するビピリジン側で固定化することで、フェニルピリジン側で固定化した場合より高い触媒活性が得られました。このことから、光増感反応における電子の動きを制御することの重要性が示されました。

細孔径を拡張した白金(II)錯体結晶の蒸気吸着履歴記録能

 

 

 

当研究室で見出した蒸気分子が脱離しても安定に存在可能な多孔質構造を有する白金(II)錯体の色による蒸気吸着履歴記録能について、その性質の拡張性を検討すべく、細孔径を拡張した白金(II)錯体を合成しました。その結果、多孔質構造は蒸気分子の脱離に伴い崩壊してしまう一方、その色は構造の崩壊前後で変化しなかった事から、蒸気吸着履歴記録能は保持されている事が明らかとなりました。この挙動は、多孔質構造の崩壊が起こっても一部で白金間相互作用が保持されているためのものと考えられます。

遅延蛍光性銅(I)二核錯体の無溶媒加熱合成

 

 

 

遅延蛍光性の銅(I)錯体は次世代の発光材料として期待されていますが、その合成には通常は環境負荷の大きい有機溶媒が必要です。本研究では、種々のトリアリールホスフィンをもつ遅延蛍光性ヨウ化銅(I)二核錯体が溶媒を用いずに原料を混合し加熱するだけで得られることを見出しました。この手法は、OLEDなどの発光層を簡便かつ低環境負荷で調製する新たな手法となると期待されます。

多彩な色でサーモクロミック発光を示す白金(II)錯体イオン液体

 

 

 

集積状態に応じて発光を変えるアニオン性のシクロメタレート型白金(II)錯体群を用いて、発光性のイオン液体を合成しました。これらはシクロメタレート型配位子の種類によって異なる波長領域で発光を示すとともに、いずれも単核と集積状態との間のエネルギー移動に由来すると考えられるサーモクロミズムを示しました。その結果、液体状態の化合物を用いて青色からオレンジ色までの多彩な発光色を発現することができました。

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乾燥過程を識別するベイポクロミック白金(II)錯体

 

 

 

ホスホン酸基を有する配位子を用いて、黄色発光を示す白金(II)錯体の5水和物結晶を合成しました。この5水和物結晶は加熱乾燥によって青緑色発光を示す黄白色固体に変化する一方で、減圧乾燥によって暗赤色発光を示す茶褐色固体に変化することから、乾燥過程によって異なる発光スペクトル変化を示すことが明らかとなりました。また、どちらの乾燥体も水蒸気曝露によって可逆的に5水和物に戻ることも見出されました。

白金(II)錯体担持メソポーラス有機シリカの発光特性と光増感

 

 2017SaitoJPPA

 

シリカ骨格に有機官能基が共有結合したメソポーラス有機シリカ(PMO)はシリカ由来の剛直さと有機基の機能性とを併せもつ興味深い多孔性材料です。このPMO上に種々の発光性白金錯体を担持したところ、その発光由来となる励起状態に応じて発光性が維持・もしくは消失することが判明しました。また、これらの担持白金錯体は細孔内で速やかな光増感電子移動を行うことも見出しました。

発光性銅(I)錯体の無溶媒加熱合成

 

 2017LiangEJIC

 

強発光材料として注目される銅(I)錯体を低環境負荷で合成する手法として、我々は以前すりつぶし合成を報告しました。しかしこの方法では融点の低い配位子を用いない場合は少量の補助溶媒を用いることが必要でした。今回、溶媒を用いない合成法として、原料をただ混合して加熱するのみで発光性の銅(I)錯体を生成させるという加熱合成の手法を確立しました。

光増感剤を酸化チタンナノ粒子に多層化したナノ光触媒の創製

 

 2017FurugoriAO

 

次世代のクリーンエネルギーとなる水素を水と光から創り出す太陽光水分解反応の高効率化を目指し、Ru(II)光増感剤を酸化チタンナノ粒子上に分子多層膜として固定化しました。驚くべきことに、同じ光増感剤濃度であるにもかかわらず、Ru(II)錯体を二層化すると光水素発生効率は3倍以上に向上したことから、増感剤分子の合理的集積化によって従来の色素増感機構を刷新可能な新しいメカニズム開発につながる結果と期待されます。

ホスホン酸エステル基が与えるイリジウム(III)錯体の光増感反応への影響

 

 2017WatanabeJPPA

 

効率的な光水素発生を行うために、光増感能剤とPtコロイドとの間の相互作用や光電子移動の制御が重要です。今回、表面固定化に多く用いられるホスホン酸基のエステルを光増感剤であるIr(III)錯体に導入したところ、無置換の錯体と比べてPtコロイド触媒の失活が抑制されました。これはホスホン酸エステルがPtコロイドに弱く配位したためだと考えられます。

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