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最近の研究結果
レドックス活性なクロム(III)錯体配位子と種々の金属イオンとの相互作用
Cr(III)とパープルオロカテコラトから成る配位子中心のレドックス能を有する錯体配位子と、種々のゲスト金属イオンとの相互作用及びレドックス反応について明らかにしました。また、この錯体配位子が相互作用するゲスト金属種に依存してレドックス特性を変化させることを見出しました。
配位子から光水素発生する3d金属錯体の系統的合成
光照射によって配位子から水素を発生させるトリス(o-フェニレンジアミン)鉄(II)錯体について、中心金属イオンをさまざまな3d金属イオンに置換させた各種錯体を系統的に合成しました。また、中心金属イオンの種類より配位子の電子構造が水素発生能に大きな影響を与えることも見出しました。
系統的な配位子置換による強発光性銅(I)単核錯体の発光色制御
非常に強い発光性と簡便な合成法を両立させた銅(I)単核錯体について、用いるN-ヘテロ芳香族配位子を系統的に変化させることで発光色を青色から赤色まで色とりどりに変化させることに成功しました。また、用いる配位子によって発光由来が変化することも見出しました。
錯体配位子ドーピングによる多孔性配位高分子の高機能化
Co(III)錯体配位子からなる多孔性配位高分子に対して、同形のRu(II)錯体配位子を不純物的にドーピングすることに成功しました。異なる電荷を有する錯体配位子を混合できたことで、多孔性配位高分子のガス吸蔵特性や構造柔軟性などを大幅に制御できる新しい手法として期待されます。
モリブデンカテコラト錯体の置換基に依存した構造・反応性の変化
[MoII2(OAc)4]とカテコール誘導体との反応により、2種のモリブデンカテコラト錯体の合成を行いました。電子供与性のt-Bu基を有する配位子では単核のトリス(カテコラト)錯体が得られたのに対し、電子求引性のBr基を有する配位子では[Mo(μ-O)2Mo]コアを有する二核錯体が得られました。これらは置換基に依存して異なる反応性を示し、特にBr基を導入した後者の錯体はDMSO還元能を示すことが見出されました。
青色遅延蛍光を示す強発光性銅(I)単核錯体
メチルピリジン配位子を有するハロゲン化銅(I)単核錯体が高効率な青色遅延蛍光を示すことを明らかにしました。いずれの錯体も結晶状態で非常に強い青色発光を示し、いくつかの錯体において100%に迫る発光量子収率を示すことを見出しました。
強発光性銅(I)単核錯体のすりつぶし合成
原料のすりつぶしによる強発光性Cu(I)単核錯体の簡便な合成法を見出しました。また、用いるN-ヘテロ芳香族配位子によって発光色が変化するとともに、いずれの錯体も非常に高い発光量子収率を示すことを明らかにしました。
白金(II)カテコラト錯体修飾ITO電極の調製
ITO(Indium-doped Tin Oxide)電極上への修飾を目指し、レドックス活性な白金(II)カテコラト錯体にアンカー基としてホスホン酸部位を導入しました。実際にこの錯体を電極上に固定化して電気化学測定を行ったところ、カテコラト配位子由来の酸化還元波が可逆に観測され、電極表面に錯体の単分子膜が形成したことが確認されました。
ゲストに応じて柔軟に構造変化する銅(I)/ランタン(III)の多孔性配位高分子
La(III)イオンとCu(I)錯体配位子からなる新規多孔性配位高分子(PCP)の合成に成功しました。このPCPはさまざまな蒸気を取り込むことが可能であり、興味深いことにナノ細孔内に取り込まれているゲスト分子のサイズや形状を認識して、その構造を変化させていることがわかりました。Cu(I)イオンの有する低配位数と、架橋部に形成されたヒドロキソ架橋La4クラスターの両者がこの構造柔軟性に重要だと考えられ、PCPのさらなる機能化に新しい知見を与えるものと期待されます。
蒸気応答にヒステリシスを示す白金(II)/銅(II)二核錯体
興味深い蒸気応答性を示すsyn-[PtM(pyt)2(bpy)2]骨格に対し、Cu(II)イオンを導入した混合金属二核錯体を合成しました。本錯体では、Cu(II)イオンをゲスト吸着サイトとして溶媒分子を取り込むことができ、興味深いことにこれらの溶媒を取り除くと色調が「赤みを帯びるもの」、「黄色に変わるもの」、「変化しないもの」が存在するというこれまでのベイポクロミック材料では見られない蒸気に対するヒステリシスを示すことが明らかとなりました。本研究成果はより高機能な蒸気認識センサーや知的気体吸蔵材料の開発につながるものと期待されます。