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関川太郎准教授(北大工)との共同研究により、ウッドワード・ホフマン則に従う反応の瞬間を世界初観測~軟X線吸収分光という新たな視点で化学反応の基本法則を解明~ (プレス発表)

2023年03月09日

北海道大学大学院工学研究院の関川太郎准教授、同大学院理学研究院の齊田謙一郎特任助教、武次徹也教授(同大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD))、東京大学物性研究所の板谷治郎准教授らの研究グループは、リング状分子1,3-シクロヘキサジエン(CHD)が化学反応の基本法則の一つであるウッドワード・ホフマン則に従い開環する過程を、フェムト秒軟X線吸収分光により解明しました。

CHD中の結合が切れる際、リング面外に飛び出ているC-H結合の捻じれる方向は逆旋方向と同旋方向の二つあり、ウッドワード・ホフマン則はその方向を予言します。有機合成化学においては、捻じれ方向で異なる生成物が合成されるので、捻じれ方向の予言は実用上大変重要です。しかし、反応は超高速に進行するため、これまで反応経路の検証は行われていませんでした。

研究グループは、最先端のレーザー技術により発生したフェムト秒近赤外線レーザーパルスを軟X線連続光(200~370 eV)に変換して、分子の結合状態に敏感な炭素原子の吸収スペクトルをフェムト秒の時間分解能で観測しました。その結果ポンプ光照射後340~500フェムト秒の間、吸収エネルギーが高エネルギー側へシフトすることが分かりました。

本研究で行った量子化学計算によると、逆旋過程の経路上において吸収は高エネルギー側へシフトする一方、同旋過程では低エネルギー側へシフトすることが示されています。実験結果との比較から逆旋過程を経由して開環していることがわかりました。これはウッドワード・ホフマン則の予言と一致し、予言通り反応が進行することを世界で初めて観測しました。

この結果は、炭素原子の軟X線吸収スペクトルは、有機化学反応のメカニズムの解明のための敏感のプローブになり得ることを意味しています。最先端のレーザー物理技術と量子化学計算の融合の成果と言えます。

なお、本研究成果は、2023年2月16日(木)公開のPhysical Chemistry Chemical Physics誌に掲載されました。

論文名:Real-time observation of the Woodward-Hoffmann rule for 1,3-cyclohexadiene by femtosecond soft X-ray transient absorption(フェムト秒軟X線過渡吸収分光による1,3-シクロヘキサジエンでのウッドワード・ホフマン則の実時間観測)
URL:https://doi.org/10.1039/D2CP05268G

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