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物理化学研究室の沿革

物理化学講座の創設は、理学部化学科が設置された昭和5年(1930)にまで遡る。

初代の教授は富永斉教授である。昭和9年の富永教授の東北大学転出の後、昭和10年から着任されたのが、かの堀内寿郎教授であり、その後30年間 に亘り熱力学及び化学反応論を柱に、固体表面における化学反応ならびに溶液内反応の研究を展開された。前者の分野では水素電極反応、エチレン水素化及びアンモニアの合成分解反応における吸着と反応の動力学、熱力学、統計・量子力学的取り扱いについて全精力を傾注された。後者の分野は、その後固体表面に酸塩基性の存在が発見されたことにより新たな展開を迎える。

昭和40年堀内教授の後任として触媒研究所から着任された田部浩三教授はこの固体酸塩基触媒研究の分野で中心的な役割を果たした。熱力学・化学反応論の堀内教授から固体酸塩基触媒の田部教授へと代替わりしても、触媒の作用機構の解明が研究対象の中心であることは不変であった。しかし、対象とする物質が、金属中心から金属酸化物・金属塩類に変わり、かつ新規触媒の設計・調製が新たに加わったことで研究内容は転針した。田部教授は四半世紀近くに亘り、精力的な研究活動を行い、平成2年3月に退官された。(るつぼ67号記事)

そして平成2年9月、魚崎浩平教授が着任された。魚崎教授の専門は電気化学であり、長く触媒化学の伝統を誇った当講座にとっては大きな方針転換である。しかし実際のところ、北海道大学は電気化学分野においても堀内教授、岡本剛先生以来国際的に高い評価を受けている。平成7年度より大学院重点化が本格化したことで、大講座制への移行が行われ、物理化学講座は分子変換化学講座内の物理化学研究室という名称に変更されたが、本質的な変化はない。魚崎教授は、固液界面の電子移動過程の制御と機能発現を目的に、精力的に研究を展開された。平成9年度から11年度には文部科学省研究費補助金特定領域研究(A)「構造規制機能界面の構築と電極反応」を領域代表として全国の研究者を率いて推進し、電気化学分野研究に新たな学問領域を創出された。(2016 JPCC Uosaki Festischarift Preface)

魚崎教授の後任として、平成22年4月に村越が着任し、魚崎教授が開拓された電気化学分野の新領域をさらに深化発展させることを目指し、光と物質の相互作用制御に基づく新規なアプローチにて新たな機能発現を指向する固液界面研究を展開している。(るつぼ67号記事)

*以上の記述では化学教室同窓会誌『るつぼ』37号に掲載された山口力先生(元愛媛大学教授)の物理化学講座小史、ならびにNIMS魚崎研究室HPの物理化学研究室沿革を参考にさせていただきました。