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最近の研究結果
キレート配位子の系統的な置換による銅(I)複核錯体の発光色制御
発光性銅(I)錯体は次世代の発光材料として有望ですが、その多くは溶液中で分解しやすいという問題点があります。そこで、ジホスフィンキレート配位子によって安定性が確保された銅(I)複核錯体に注目し、このジホスフィン配位子上の芳香環に窒素原子を段階的に導入することで、溶液中での安定性と緑色からオレンジ色までの幅広い発光色制御の両立に成功しました。
チオラート架橋銅(I)多核クラスターの骨格に依存した発光挙動の変化
中心骨格として2核、4核、6核のクラスター構造をもつチオラート架橋銅(I)錯体Cu2、Cu4、Cu6をそれぞれ選択的に合成しました。これらのクラスターは、その骨格に依存して発光色のみならず発光挙動まで変化させます。例えばCu2とCu4は室温で遅延蛍光、低温でリン光を示すのに対し、Cu6はクラスター中心の3重項励起状態に由来する顕著なサーモクロミック発光を示しました。
配位性官能基を導入したルテニウム(II)錯体を用いた光酸素発生反応
配位性官能基としてホスホン酸基またはスルホン酸基を導入した光増感能を有するルテニウム(II)錯体(RuCP2とRuCS2)を合成しました。RuCS2は2種類検討した酸素発生触媒のどちらを用いた場合でもRuCP2よりも酸素発生量が多いことを見出しました。また、RuCP2をTiO2ナノ粒子に固定した光増感剤はRuCP2分子単体の光増感剤よりも酸素発生量が増加することも明らかになりました。
強発光性銅(I)錯体の選択的すりつぶし合成とすりつぶし配位子交換
ヨウ化銅と配位子に溶媒を数滴加えてすりつぶすことで、黄緑色強発光性のCu(I)錯体が合成可能であることを見出しました。この系では三座配位の配位子を用いたため副生成物が発生せず、目的物が単成分で得られます。また、Cu(I)アセトニトリル錯体を原料として合成した類縁体にヨウ化カリウムと数滴の水を加えてすりつぶすことで、配位子交換反応が進行し、青色の弱い発光から黄緑色の強発光へと変化します。
形状記憶能を有するベイポクロミック白金(II)錯体結晶
水素結合ドナー・アクセプター部位を有する配位子を用いた白金(II)錯体を合成しました。この錯体は特定の蒸気吸着によって水素結合に由来した多孔質構造を構築し、蒸気を失ってもその細孔を維持する一方で、すり潰す事で多孔質構造を持たない始状態へと戻す事が可能な「形状記憶能」を示します。またこの細孔構築前後で蒸気吸着特性やベイポクロミック挙動が異なるという、形状記憶能を利用した外部刺激(すり潰し)による蒸気応答性のON-OFFが可能である事を見出しました。
強発光とマルチカラーエレクトロクロミズムを両立する白金複核錯体
酸化還元によって発光をON-OFFできる白金複核錯体に対して、水素結合による錯体間での集積能を導入しました。その結果、これまでのONとOFFに加えて多量体構造に由来する第3、第4の状態「混合原子価状態」が現れ、酸化還元で発光をON-OFFしながら溶液の色をオレンジから青、ピンク、黄色へと色とりどりに変える系が構築できました。
発光波長とイオン伝導度が連動する多孔性配位高分子
発光性ルテニウム(II)錯体配位子とランタン(III)イオンからなる多孔性配位高分子(PCP)を合成しました。このPCPは細孔内に多量の水分子と水酸化物イオンを有し、高湿度条件下においてイオン伝導性を示します。また、相対湿度に依存して錯体配位子由来の3MLCT発光エネルギーが変化することが見出され、イオン伝導と発光挙動が同時に変化する珍しい系であることが分かりました。
銅(I)クラスターを用いたベイポクロミック発光性配位高分子
強発光性錯体として知られている銅(I)クラスター錯体を構築素子として用いて、蒸気に応答して発光色を切替える「ベイポクロミック発光性配位高分子」の合成に成功しました。2核クラスターを用いた場合では、非常に強固なフレームワークが構築され発光色が変化しない一方で、4核クラスターを用いた場合では、蒸気の吸脱着に応じて発光色が変化する「ベイポクロミック発光」を示すことがわかりました。本成果は、安価な銅を利用した新しい化学センサーのための基盤材料になると期待されます。
カルボキシル基による発光性白金(II)錯体の集積制御
集積状態の制御を目的に、水素結合能・配位結合能を有するカルボキシル基を導入した強発光性の白金(II)錯体の合成を行いました。無置換体では単核由来の発光を示すのに対し、カルボン酸体では固体・溶液状態でも集積由来の発光を示すことを見出しました。このような単純な錯体分子による溶液中での集積状態の制御は珍しく、新たな集積法として期待できます。
二成分発光を示す白金(II)錯体イオン液体の合成
単核及び集積状態によって発光色変化を示すアニオン性の白金錯体において、イミダゾリウムを対イオンとするイオン液体を合成しました。得られたイオン液体は単核及び積層状態由来の発光が観測される二成分発光特性を有し、その発光強度比は温度により変化します。これらの発光挙動にはイオン液体中で単核及び集積状態の共存とエネルギー移動が関与しているという、興味深い性質を持つ液体状化合物であることを見出しました。