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研究概要・研究内容

研究概要

生体中で重要な働きを担う蛋白質のしくみを解き明かすため、蛋白質の構造に基づく機能解析に取り組み、さらにそこで得られた情報をもとに蛋白質の機能設計の試みまでを強力に推し進めています。そのため、分子生物学的、生化学的手法を駆使したアミノ酸置換蛋白質の効率的な発現、精製手法から、理学部では最高性能の600 MHz超高感度高分解能NMR装置、蛋白質のミクロ構造を鋭敏にとらえるレーザーラマン分光装置、物理化学の基本原理に基づくシミュレーション計算といった物理化学的な手法まで、学際領域の多くの最新鋭の手法を取り入れて研究を進めています。このような研究で得られた成果や開発した手法は、ポストゲノムの時代に注目されている蛋白質の分子構造に基づく創薬や治療法の開発、クリーンな機能性材料としての人工蛋白質の設計など、これからの実際に社会に役立つ新技術、新材料の基礎研究としても重要な意義があります。

 

 

研究内容

センサータンパク質の構造および機能の解析

鉄輸送

生物はその恒常性の維持のため、多くの機能を厳密に調整・制御する必要があり、その分子機構は、金属イオンなどのシグナル伝達物質によって仲介されている。我々は、これらのシグナル伝達機構について、分子構造を明らかにし、機能発現の分子レベルでの解明を試み、人工的な制御の可能性を追求している。特に、金属イオンの代謝機構に注目し、その異常との関連性が示唆されている神経性疾患や肝炎といった疾患とセンサー蛋白質の機能を関連付けることで、その発症の分子論的描像の解明を試みている。

 

呼吸鎖における電子伝達機構の解明

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酸素呼吸生物は解糖系で得られた電子を用いて効率的にATPを生産している。このATP生産過程には効率的な蛋白質間の電子伝達過程が必須であり、その解明は酸素呼吸生物のエネルギー生産の分子論的解明に必須であるばかりではなく、今後注目されるクリーンな生物エネルギー生産実現のためにも注目されている。我々はこの蛋白質間電子移動について、超高分解能多核多次元NMRを用いることで、その分子機構の解明と人工的な制御を試みている。

 

「ナノディスク」を用いた膜タンパク質の構造・機能に関する研究

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生理的に重要な蛋白質の多くは生体膜に結合した状態で機能している。しかし、生体膜に結合したままでは蛋白質の精製が困難であるため、これまでの膜蛋白質の研究は、生体内とは異なった環境下での構造や機能が議論されてきた。そこで最近、脂質と脂質のまわりを取り囲む蛋白質を用いることで、半径が10 nm程度の円盤状の膜、「ナノディスク」を作成し、その中に蛋白質を入れ込む手法が開発されてきた。この手法を用いて、蛋白質をより生体内に近い条件でその機能や構造を検討するとともに、蛋白質を一定方向に配列させたナノデバイスへの応用の可能性を検討している。

 

蛋白質の立体構造構築原理に関する研究

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蛋白質は、ペプチド鎖が水素結合などの弱い力で一定の立体構造を維持し、その機能が発現すると想定されている。しかし、このような蛋白質の立体構造形成については、ペプチド鎖のアミノ酸配列に依存すると考えられているものの、その立体構造構築の原理については不明な点が多い。そこで、種々の独自に開発した分光学的手法を駆使することで蛋白質立体構造形成過程を追跡し、その分子機構を明らかにすることで、蛋白質の立体構造構築の基本原理や機能発現の分子機構を解明することを目指すとともに、人工的に設計された高機能性新規蛋白質の実現をも試みる。

 

病原菌の金属イオン獲得機構

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病原菌は増殖するために様々な金属イオンを必要とし、その多くを宿主から獲得する。例えば、鉄イオンは血液中のヘモグロビンから補酵素であるヘムを抜き取り、それを分解することで獲得している。そのため、金属イオンの獲得機構を理解することは、病原菌からの防御・医薬に関連すると考えられる。独自に開発した分光装置を利用し、病原菌の金属イオンの獲得機構を明らかにする研究を行っている。

 

分子シャペロンの作用機序解明

分子シャペロン

分子シャペロンはタンパク質の折りたたみや輸送など翻訳後のタンパク質の成熟の過程を助ける生体分子であり、その多くが高次構造をとらない変性状態の基質タンパク質との相互作用によって機能する。我々はタンパク質新生や輸送など多くの場面で活躍するTrigger Factor (TF) シャペロンに着目し、溶液NMR法による構造解析・ダイナミクス解析を主体とした研究を展開している。TFと基質の詳細な相互作用メカニズムを明らかにすることによって、シャペロンがどのようにして基質の折りたたみや輸送を助けるのか、といったシャペロンの普遍的な分子機構を明らかにすることを目指す。

 

タンパク質構造推移を定量的に捉える手法の開発と応用

構造推移

生体内では種々の重要な役割を担うタンパク質はそれぞれ特徴的な立体構造を有し、さらにそれをダイナミックに変化させることによって機能を発揮する。そのためタンパク質の立体構造が決定されてもなお、その機能発現メカニズムが理解されていない場合が数多く存在する。我々は溶液NMR法を主体とした複合的なアプローチにより、タンパク質の構造変化を時間・空間の観点からより詳細に明らかにする手法の開発と応用に取り組んでいる。これによって、タンパク質が動く姿を捉え生体反応のメカニズムをより深く理解することを目指す。

 

構造最適化手法の開発とそれによるクラスターとタンパク質の最安定構造のシミュレーション

複雑なポテンシャルエネルギー表面を持つクラスターやタンパク質について、それの最安定構造を検索する手法を開発する。この大域的構造最適化法を応用し、クラスターサイズが数十・数百程度までの単一の分子・原子からなるクラスターについて構造を計算する。得られたクラスター構造と構成分子の形状の相関を明らかにする。分子が集合化していく過程を研究する。

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